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「声が大きい。おそらく今のでこっちの会話に集中し始めた奴らは、俺が死ぬと勘違いしている」
「ここ、ロシアですよ? 日本語がわかる人、そう居ないと思いますが……」
「うっ……そうだった」
ところで、とノンナは直樹の後方を見る。
「さっきから銀色の女性があなたを見ていますが……」
直樹も後ろを見る。幾多の木が植えられているだけだ。
「なんだ? ここに鎧をつけた女でも居るのか?」
「いえ、髪が銀色なんです」
髪が銀色の人物など、男女含め一人しか知らない。
「アリスか?」
一本の木からギクリという雰囲気が伝わってきた。観念したように出てくる。やはりアリスだ。
「なんだよ。居たなら話しかければよかったのに」
「あんたがあの時の女をナンパしているから出にくかったんじゃないの!」
「あれが噂のナンパなんですか? 神谷さん?」
二人は直樹を見る。直樹は首を横に振る。
「違うんですか……。残念です……」
「何故だ!?」
「それはもちろん……」
ノンナは急に顔を上げた。直後、警報が鳴り響く。
「な、なんだ!?」
先ほどまで穏やかだった人々は、押し合いながら一カ所を目指す。
「また襲撃!?」
ノンナが言った。
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