第一話

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大男はミハイルを殴ろうと、乱暴に腕を振るう。今のところ当たってはいないが、いつ当たるかわかったものじゃない。 『こ、こちらγ! ぞ、増援をもと……うわぁ!』 『γ、応答しろ! クソッ! 隔壁下ろせ!!』 * γチーム隊長のキリル・ベノフは、広がる血の上に倒れていた。下半身の感覚がない。 「こ……こちら……γ……応答を……」 『γ、無事だったか!? 現在隔壁を閉鎖させている。急いで逃げてくれ』 呼吸をする度に、胸が焼けるように痛い。 「いや、もう遅い……。γ、状況報告……。全滅。……報告……終了……」 ぴちゃぴちゃと、足音が近づく。たかが犬だと油断していた。死角から急襲され、この様だ。 腹部に激痛。食われているのだ。今、この瞬間……。 「い……嫌だ……やめて……やめてくれ!」 しかし、そんな言葉虚しく、激痛が止まない。 「お、俺は……死……にたくない!」 まるで呼応するかのように犬の食事が止まった。そして、遠吠え。しかし、それは中途半端に途切れた。 代わりに、血にまみれ、首がズタズタになった犬の死体が彼の横に蹴飛ばされた。
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