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大男はミハイルを殴ろうと、乱暴に腕を振るう。今のところ当たってはいないが、いつ当たるかわかったものじゃない。
『こ、こちらγ! ぞ、増援をもと……うわぁ!』
『γ、応答しろ! クソッ! 隔壁下ろせ!!』
*
γチーム隊長のキリル・ベノフは、広がる血の上に倒れていた。下半身の感覚がない。
「こ……こちら……γ……応答を……」
『γ、無事だったか!? 現在隔壁を閉鎖させている。急いで逃げてくれ』
呼吸をする度に、胸が焼けるように痛い。
「いや、もう遅い……。γ、状況報告……。全滅。……報告……終了……」
ぴちゃぴちゃと、足音が近づく。たかが犬だと油断していた。死角から急襲され、この様だ。
腹部に激痛。食われているのだ。今、この瞬間……。
「い……嫌だ……やめて……やめてくれ!」
しかし、そんな言葉虚しく、激痛が止まない。
「お、俺は……死……にたくない!」
まるで呼応するかのように犬の食事が止まった。そして、遠吠え。しかし、それは中途半端に途切れた。
代わりに、血にまみれ、首がズタズタになった犬の死体が彼の横に蹴飛ばされた。
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