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「よぉ! お前がボートに乗ってるのを助けられた日本人か?」
外国語ばかり聞こえていた異国の地で、不意に聞こえた日本語に思わず反応する。
「誰だ?」
直樹は黒人の男を見る。
「ここはロシアなんだろ?」
「ロシア人全員が白人じゃあない。国籍さえあれば人種は関係ないからな」
「なるほどな」
「で、ボートに乗ってたやつか?」
「あぁ」
直樹は、刃先の欠けたナイフをいじりながら答えた。
「物騒なもん仕舞えよ。なぁ?」
「いつまでこんな部屋に閉じこめるんだ?」
「さぁな。俺の知った事じゃない」
黒人は狭い部屋を見回しながら言った。
「ところで、お前のリュックから面白いもんが見つかった」
そう言って見せてきたのは一枚のディスクだ。
「破損ファイルばかりだが、どうしたんだ?」
「中身ならコピーすればいい。とりあえず研究所に忍び込んだ際に頂戴した」
黒人は解せないといった表情を浮かべる。
「アリスの親父があそこに勤めていたんだと。ただ、家では荒れていたらしいがな」
「なるほど。彼女は父親の物を使ったのか。ちょっと、できすぎた話じゃないか?」
黒人は机の向かいにある椅子に座った。
「で、何の用なんだ?」
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