第一話

5/23
前へ
/25ページ
次へ
「え? 貰ってないよ?」 「なん……だと!?」 「ま、まさか……相部屋!?」 アリスは驚きの声をあげる。 「待て、早まるな。確認する」 直樹は通信機能付き翻訳機を装着する。今思えばコンパクトなのに多機能、すごい。 「なにそれ?」 「これも貰ってないのかよ……あ、ミハイルだっけか?」 直樹は事情と用を言う。すると、笑い声が聞こえた。 『悪い悪い。こちらの手違いだろう。すぐに部下が行く』 「部下って……お前、偉かったのか?」 その時、足音が聞こえ、振り返った。そこには鍵と翻訳機を持った人が居る。アリスは受け取った。 「おいテメエ」 『おっと急用だ。失礼するよハハハハハ!』 相手に通信を切られた。直樹は落ち着いた動作で翻訳機を外す。 「あの野郎! 逃げやがったぁ!」 直樹は大きくのけぞる。そのせいで、たまたま歩いていた黒髪の女性とぶつかった。 「あ、失礼」 「いえ、こちらこそ……」 髪に隠れ、顔は見えなかった。女性は足早に立ち去った。 「なぁ、アリス……」 「なに?」 「あいつ、髪切った方がよくないか?」 「そうね」 二人の視線を知らず、足首まで髪が伸びている女性は角を曲がっていった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加