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扉が…あった。
周りになにもない。壁や床すらもなく、ただ扉だけが、そこにあった。
いつからあったのか、そもそもここはどこなのか、俺はなぜこんな場所にいるのか。
色々な疑問が際限なく沸いてくるなか、俺はたった一つの不思議な衝動にかられていた。
この扉を…開けなければ。
状況も分からず、理由もわからないが、ただ一心にそう感じていた。いわば、一種の使命感、とでも言えるのか。
ゆっくりと扉のドアノブに手をかけ、ゆっくりと静かに回す。
『ギィィィィィ………』
どこからどう見ても古くは見えないその扉は、まるで年代物の扉の如く、その身を軋ませ、独特の音を紡ぎだし、またもやゆっくりと開いた。
「ようこそ、ベルベットルームへ」
開いた途端、その中身を確認する時間までもなく、俺は歓迎をうけた。
部屋の中心には机、その机を挟むようにソファーが置かれ、そのソファーには一人の老人が座っていた。気がつけばもう、俺はその老人と向かい合う形で立っていた。
「あなたは非常に面白い力をお持ちだ」
………??
「あなたは近い将来、閉ざされたもうひとつの世界にてペルソナに目覚め、またこの部屋を訪れることでしょう」
………ペルソナ??
「今はまだ分からずとも、いずれ近いうちにお分かりになることでしょう」
………何のことだ??
「おや…そろそろお目覚めになられる時間でございます」
……ちょっと待てよ!!
「私の名はイゴール。またいずれ、お会いいたしましょう」
イゴールと名乗った老人の言葉と共に、部屋が歪み、回り始め、反転し始めた。これが目覚め、なのだろうか。
ともかく、もう無理だ。
目を閉じよう。
そして、世界は黒一色に変わった。
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