序章

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その忍者のすぐ隣では、全身を漆黒の鎧兜に包んだ人物が一匹のオークと向き合っていた。 兜も鎧も盾も、見る者を威圧するような凶々しさを放っているが、その右手に握られた曲刀は更に妖しい気を放っていた。 ゆるり、と反った刀身には、溜息が出るような美しい刃紋が広がっていた。 よくよく注意して見れば気付くが、美しい刃紋は表裏全く同じである。 不意に、ついついつい、とその切っ先が右に左にと振られた。 オークは一瞬びくりっと身構えたが、その人物が自分に向かっては来ないので、豚のような声で何言かを喚きながら一歩前に出た。 いや、歩こうとしたが、オークの両足はその場に残っていた。 オークの身体は石の床に倒れこみ、床に着く前にバラバラになり10枚ほどの肉片になっていた。 きれいに輪切りにされていたのだ。刀身はオークに触れてもいなかったのにである。 オークは眉間に皺を寄せた表情のまま絶命していた。 侍。洗練し鍛え上げられた異国の剣「カタナ」を振るい、気で物体を斬る事を極意とする東方の戦士。 レベルが上がれば魔法も取得することが出来る、一騎当千の魔法戦士である。
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