序章

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私が視線を左に廻らせると、もう一人の戦士がオークと戦っていた。 「たたかっていた」と言うより「たたかせていた」のほうが正しいのかもしれなかった。 粗末な皮鎧を身に着けたオークは、やはり粗末な錆だらけの斧を、振り上げては下ろし振り上げては下ろしをしていた。 オークの攻撃は戦士に微塵ほどのダメージも与えてはいなかった。 戦士は侍と同じ意匠の、黒く禍々しい兜と盾を身に着けていたが、鎧が違っていた。 その戦士の肉体を覆っているのは白く輝く、きらびやかな衣服のような鎧であった。まるで「布で作った鎧」のようである。 王宮を警護する衛兵が着けるような立派な鎧に見えるが、材質は絹のようにきめ細かな布に見え、その布自体が淡く白い輝きを放っていた。ミスリルと思しき糸で美麗な刺繍も随所に施されている。
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