くちぶえ、そのプロローグ

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「は~、もう俺やってけんのかー?」 「知るか!ケンジが悪いんでしょ?ばっかみたい」 「おめえ、一言余計なんだよっ!」 「第一さあ、なんでケンジ坊主のくせに鏡の前につったってんの?」 「うっせーな。関係ないし。お前こそなんだよ、ん?元がブスだから化粧でごまかさなきゃ?はは」 「あたし、そんなこと言ってない!」 「ちょっと朝からなに喧嘩してるの?二人とも学校遅れるよ?」 狭い洗面所の扉越しから母さんの声が響く。 「あたし今日朝練ないもーん。」 あら、そうなの、母さんの声が聞こえる。 「ケンジはー?今日入学式でしょー?」 「げっ」 俺のどっかから変な声が出た。携帯を見るととっくに俺の出発予定時刻を過ぎていた。 ここで説明をしておこうか、 今日は私立花の木高校の入学式。 そう、俺はここの新入生だ。 でも、俺が本当に行きたかった高校はここじゃなかった。 第一志望の私立笹の葉高校は野球の名門で甲子園常連校。 小さいころから野球をやっていた俺にとって笹の葉は憧れだった。 ただ、俺はとんでもない失敗を犯したことに中3の頃改めて気づいた。 俺はとても頭が悪い。自覚はもともとあった。 んでもって大の野球バカで割とポジティブ。これは受験の前くらいに知った。頭が悪いため推薦をねらおうとしたけど、学力的にもらえなかった。 (なんせ笹の葉は野球だけでなく学力も高い。) だが!俺はあきらめなかった。野球の次に勉強を優先し、一般で笹の葉(あと花の木ね)を受けた。 ただ結果はぼろぼろだった。 今考えたらそれもそうだったのかもしれない。 周りは反対しまくってたし、コーチには失望された。 野球を優先して勉強した結果、なんとか花の木には受かってた。 (偏差値の差がやばかったが) 姉ちゃん(1つ上)には 「あんたあんなに勉強してなかったのに花の木受かっただけでも感謝しなさいよ」 と上から目線な言葉をもらった。 でも、しかたない。姉ちゃんは笹の葉高校だから。
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