第一章 僕の存在

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今日は地面に打ち付けるような土砂降りの雨が降っている 普通の奴ならばこんな悪天候の中外に出ようとは思わないだろう 例外が居れば仕事を終え帰宅途中の者か用事で外出しなくてはならない運のない者か多分そのぐらいだろうが僕はリハビリもかねた散歩をしていた 冷たい風が吹いても嫌悪感は湧かない 靴や服が濡れてグチョグチョでもお構い無し 水溜まりがあっても避けるなんて事はしないでそのまま歩く 今の僕には興味などないからだ だがソレは偶然視界にはいった 【人が捨てられている】 ただゴミ捨て場に【倒れている】なら何も問題などない この3番スラム区域ではよく見掛ける光景だからだ でも彼女は捨てられていた 体育座りで俯いたままピクリとも動こうとしないからだ 白い絹糸見たいな髪 見るからに傷だらけの細い体 服なんか原型を留めていない そんな彼女の存在に5年前から生まれた僕は初めて興味が湧いた 「君は捨てられているのですか?」 「……」 「僕の声は聞こえてますか?」 「……」 「……」 「……」 暫くの無言 彼女は相変わらず動かない
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