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それを壊してしまうような気持ちに気付いたのは美音が高校生になってからだった。
女の子はいきなり大人びたように成長する。
それが怖く、寂しくもある。けれど幼いまま俺に付いて来るアイツは愛しく、家族以上の愛情を感じてしまった。
血は繋がっていない。
だからこそ、家族の繋がりは絶対的だ。
そして美音の未来も。
いつか良い人と結婚して子どもを産んで、そんな未来を壊したくはなかった。
「親父…今度温泉行くか」
「その前に嫁さん作れ」
親父の呆れた声に俺は困ったように笑った。
「…美音が嫁に行ってからでいいよ」
親父はコーヒーを俺に渡して馬鹿だなと呟いた。
それでいい。
「夜兄ちゃん!」
「あぁ…帰り」
ドタバタと帰って来た姪はまた更に成長していて俺はまた、更に蓋をする。
どうか、コイツが幸せになれるように。
俺の気持ちは蓋をするから。待ち遠しく想う気持ちも億劫にもなる気持ちも。
隣に座った彼女の頭を撫でながら俺は笑った。
彼女が幸せになれるように祈るよ。
だから俺は一生嘘つきでいよう。
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