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夜兄ちゃんは無愛想でめったに笑わない人だった。
それでも、夜兄ちゃんは私の相手をしてくれた。
「美音、雨は神様が泣いてるんだ」
「どこかいたいの?」
「一人が寂しいんだよ」
夜兄ちゃんの話はどれも嘘ばかりだった。
「美音、動物達は実は喋れるんだ。だから、動物に悪さをしたら言いつけられるぞ」
「わるいことしないよ」
「そうだな」
それでも、彼の嘘は素敵で私は信じた。
だって、夜兄ちゃんの嘘は幼い私の楽しみでもあった。
「6ガツのはなよめさんはしあわせになれるの?」
「あぁ、6月の妖精達が祝ってくれるんだ」
「じゃあ、みねはよるにいちゃんのはなよめさんになる」
「俺に嫁さんがいなかったらな」
よるにいちゃんは私のヒーローだった。
そして、ママと二人が血が繋がってなくっても家族だった。
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