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何時からだろうか、実家に帰るのがこんなにも待ち遠しく、億劫にもなったのは。
俺は降りしきる雨を見つめていた。
実家でぼんやり雨を見ていると昔に戻ったように感じてしまう。
だが部屋に並んだ写真には歴史が並んでいて、あの時の子どもは高校生になっていた。
もちろん、俺も三十路前の男に。
「コーヒー飲むか」
親父は相変わらず無表情でコーヒー豆からコーヒーを入れ始めた。
お互いに有給休暇を取り親孝行がてら食事から帰って来たばかりだった。本当は温泉へと連れて行きたかったが、今忙しいからと今回は見送った。
「…二人は元気?」
「姉ちゃんも美音も元気だよ」
歳の離れた姉の娘、美音は可愛い妹みたいなものだった。
絶対に守らなければいけない存在。
美音はそんな対象だった。
寂しさを誤魔化すように教えた嘘達はくだらなく子供じみて恥ずかしい思い出だ。
嘘つきと言われなかったのが不思議なくらいアイツは懐いていて…それは今も変わらなく俺は億劫だった。
「…親父は凄いよな…姉ちゃんを育てて」
「お前らは俺の子どもだよ」
母親の連れ子と父親の連れ子だった俺達。姉ちゃんの母親が消えても俺達と同じように育てた親父には頭が上がらない。
だから家族とは絶対的なものだった。
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