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夜の道を走る…
雨を凌げる場所など限られている…
1月の気温の低さと雨に濡れて体温がどんどん下がるのを感じる。
バイクはホテルで停車した。
タカとホテルに入ると言う事は許されない事なのかもしれない…
私にはセイと言う彼氏がいるのだから…
だけど身体の震えは更に酷くなり唇もガタガタ…
私は暖を取りたい気持ちでいっぱいだった。
あまり綺麗なホテルじゃなかったが今の私とタカにはムードとかそんなのは関係ない。
部屋に入りタオルで身体を拭く。
濡れたままじゃ風邪を引いてしまう…。
タカはバスルームに行きバスタブにお湯を張り出した。
『シャワーやと風邪引いたらアカンから浸かった方がええぞ!』
そう言ってバスタオルを私に投げて来た。
タカは部屋の暖房器具の前で暖房を最高に調整し髪を拭いていた。
暫くすると
『もう湯入っとるやろ!
入って来たら?』
『タカ先に入りや…』
『俺は大丈夫やから…
お前が風邪引いたら俺のせいやし…
暖まって来い』
背中を向けたままそう言った。
私はその言葉に従った。
寒くて寒くて仕方なかったから…
バスタブに浸かり段々と身体が暖まって来る…。
私は何してるんだろう…?
こんな状況になってしまって…。
これも神様の悪戯?
私は…
何故か涙が出た…。
こんな時まで優しいタカ。
セイを裏切ってるだろう今の現状…
自分がすごく嫌な女に思えて仕方がない…
自分の服はとても着れる状態じゃなかった。
再び着るとまた体温は奪われていくだろう。
ホテルのルームウェアに袖を通し自分の服は洗面所に干した。
部屋に戻るとタカは同じ場所に座っていた。
『身体暖めて来たら?』
『もう大丈夫か?
寒くないか?』
『うん…大丈夫…
タカも入って暖まって来なよ…』
タカは小さく
『おぉ…』
と言い部屋から出て行った。
窓を開けてみる。
雨はどしゃ降りになっていた。
部屋の中に雨が入って来たので急いで窓を閉めた。
タカの濡れたジャンパーが床にそのまま脱ぎ捨てられていた…
私はそれを拾いハンガーに掛けようと思った。
ポケットの中からバイクのキーが滑り落ちた…
拾い上げるとキーホルダーには
『TAKA&YOU』
初めて見るキーホルダーにまた切なくなった…
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