587人が本棚に入れています
本棚に追加
知らない歌ではなかった…
よく耳にする歌だった…
だけどいつも聞いていた歌とは全然違う様に聞こえた。
タカの気持ちが込もってるからなのか…
胸が熱くなった。
嬉しかった。
すごく…すごく…
曲が終わっても私はブラウン管から目が離せずにいた。
私の頬に涙が伝ってる事さえ気付かなかった。
タカは私の頬を撫で抱き締めて来た。
かつて私が一番落ち着けて癒されてたタカの胸の中…
私はタカの腕を振りほどく事は出来なかった。
タカの背中に腕を回す事も出来なかった。
タカは耳元で囁いた。
『俺はゆうの事ずっと思い続ける…
だけどやっぱ俺らはヨリは戻せんのやろの…
俺はゆうの幸せ願とるから…
いつもゆうの味方やから…
』
私はまた涙が溢れた。
『ゆう…
愛してくれてありがとの!
俺はゆうと出会うてすげぇ良かったわ!
多分…俺の中で今までもこれからもゆう以上に好きになる女はおらんと思うけど…
俺も幸せになるから…
お互いの幸せ見つけようの!』
涙が止まらず泣きじゃくる私の頭に『ポンッ』と手を置くタカ…
返事をしたいのに…
私の思ってる事も伝えたいのに言葉にならなかった。
私とタカは結局同じ事を考えていた…。
気付けば朝の6時少し前だった。
雨は止んでいる…
帰る支度を整えまだ半乾きの服を着てホテルを後にした。
もう二度とタカのバイクの後ろに乗る事はないだろう…。
これが乗り修め…。
すごく寒くて体温がまた奪われつつある。
家に到着…
このままタカを帰したらきっと風邪引いちゃうだろうな…。
そう考えてたら思い出した。
確かタカの衣服が残ってた事を…
家に取りに戻りタカは寒いのよりはマシだとその場で着替えを済ました。
これでお別れ…
今まで幾度となくタカとの別れはあったけどお互いが納得して
『さよなら』
するのは初めての事だった。
最後に…
今までの想いを全部託し…
抱擁をした。
今までありがとう…
そして本当に…
『さようなら』
二十歳…
大人と呼ばれる年になって私とタカは同じ決断を下した…。
最初のコメントを投稿しよう!