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家に帰る。
兄は帰って来てない様子だった。
かつての自分の部屋に足を運ぶと当然の事ながらガランとしている。
あるのは置き去りにされたままのパイプベットとタンスくらい…
押し入れから布団を出しベットに引き、窓に掛かったカーテンを開けて月を眺めていた。
『今頃一生懸命自転車漕いで帰ってるんだろうな…』
詳しい場所までは聞かなかったが私の家から彼の住む町は自転車で30分はかかるだろう…。
気付けば彼の事が気になってた。
彼の名前は
『タカ』
お姉さんと弟の3人兄弟で両親は小さな飲食店を経営してるらしい。
水産高校に通いながら夕方からは居酒屋でバイトをして自分で学費を払うと親と約束していると彼は言っていた。
今日はたまたまバイトは休みだったらしい。
でも何で送ってくれたんだろう?
初めて会って話もしてなかったのに何でだろう?
不思議だった。
すごく優しくしてくれて振られた事さえ忘れるくらいの楽しい時間を与えてくれて…
今の私が一番欲しかった言葉に出来ない何かをタカが与えてくれた気がした。
もう一度会いたいなぁ…。
私はなかなか眠りに付けず、タカの事を考えていた。
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