587人が本棚に入れています
本棚に追加
タカは全く動かない…
それに気付いたタクもタカの顔を覗き込んだ。
『タカ寝てるし!』
何だ…寝ちゃったんだ…。
『所でさ。』
タクが私に話掛ける。
『昨日タカに送ってもらったんやろ。お返しやないけどコイツをバイト先まで送ってやってくれんか?』
『え?何で?』
『コイツのチャリさっきパンクしやがったからチャリ屋に持ってっとんや。やからバイト行く足がないねん。』
そういう事か…。
『別にええよ。』
と答えた。
昨日あまり寝てないんかな?
時間イッパイまで寝かせてあげる事にした。
バイトの時間の15分前にタカを起こした。
『バイトやろ?起きなよ。』
体を何度か揺さぶるとタカが目を覚ました。
寝ぼけてるみたいだった。
ハッと我に戻ったらしい…。
『何でゆうがおるんや!』
『おるからおるんや(笑)』
『…。』
『取りあえずバイト行かんと遅れるよ。昨日のお返し。送って行くから。』
そう言いながらバッグを手にした私を見てタカも立ち上がった。
『じゃあ、また送って戻って来るわ。』
『後でね。』
部屋を出て階段を降りる。
後ろを振り返るとタカの姿がないし…。
取りあえず外に出て自転車に鍵を差し込んでるとタカが急ぎ足で出て来た。
『じゃ今日は俺後ろや!』
勢いよく後ろに飛び乗るタカ。
『ハイハイ。』
自転車を走らせる。
『所で帰らんで良かったん?』
『自分でも分からんけど帰りたくなかってん…』
『そうなんや…もしかしてまだ引きずってるん?』
『それはないかな…』
『そっか…』
沈黙になる。
自転車は信号に捕まる事なく走り続ける。
私の鼓動は実はずっとドキドキしていた。
それが何を意味するのか認めようとする自分に気付いた。
最初のコメントを投稿しよう!