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知ってる友達に久々と言う事もあり、軽く会話を交わす。
『久しぶりやの~。
向こうが嫌で逃げて帰って来たんか』
『ちょっとね…
明日には帰るけどな』
なんてありきたりな会話を交わしながら
周りの雰囲気を伺っていた。
一緒に来た友達は慣れた手付きでビニール袋にトルエンを流し入れ、それを口に運び息を吸ったり吐いたり…
それを繰り返しビニール袋は鼓動のように膨れては萎んでの動作を繰り返す。
『やれば?嫌な事全部忘れるよ』
その言葉に忘れられるなら…
と徐に渡されたビニール袋を手に取り、見よう見真似で同じ動作をやってみる。
強烈な喉の刺激に咳込み…
それでも現実から逃げ出したかった私は何度か繰り返してみる。
だけどやればやる程喉に違和感を感じるだけで現実から逃避する事は出来なかった。
周りを見渡すと会話もなくただ部屋の中に響くのはファミコンの軽やかなゲーム音だけだった。
顔見知りの男の子がシンナーには全く手を出さず1人黙々とファミコンに没頭していた。
『何でせんの?』
問い掛けると
『興味ないから』
取りあえず私にも合わないらしい。
外の空気でも吸いに行こう…
そう思いコンビニに向かった。
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