導く道の道標

そんなこんなで始まりました

　成仏とは何かと聞かれた時、恐らくそれは、人や幽霊の未練がこの世になくなり、満足して死を受け入れることができた事だと、僕ならば答える。

　国語辞典をめくってみると、そこには違うことが記されていたのだが、これは僕なりの答えだ。別に正解を探している訳でも、求めている訳でもない。

　何をしたいわけでもないのだが、何ができるわけでもないのだが、しかし、今日も退屈なのだ。

　長いこと入院生活を共にしてきた病室から引っ越しが決まり、次の部屋に入ってから一週間が経過した。

　一週間前、はれて僕は『最上階』の住人となった。

　同じ地域、というか病院内での引っ越しだった為、住民票を新しくしなくて良かったと、少しばかりの現実逃避をしたのが引っ越し初日の事。

　僕に、あからさまな自由が与えられた日だった。