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「突然何の用?暇じゃないんだけど?」
口をとがらせて文句を垂れたのはアイシャ。手元の雑誌から目を離さずに言う。表紙にはばっちりポーズを取ったアイシャ自身が写っている。最新のファッション雑誌なのだろう。15歳のこのギルド員はモデルも兼業しているのだ。つまり可愛くて強いーーピンクの髪にキャッツアイすらりとした手足ーー俺好みではないが人気の出そうなルックスだった。
「悪い悪い。ちょっとみんなに報告があって。……実は俺、学園に通うことになったんだ」
一瞬、誰かの息をのむ音が聞こえる。続いて、吐息。
「がくえん……イリア、いかなきゃだめ?」
この中で13歳と最年少の少女スイが、俺の服をつかんで訴えかける。スイは前から何かと俺に懐いてくれている。妹といった存在だ。白い雪のような長髪をなでてやると、嬉しそうに目を細める。
「そうですよ、イリア様が愚劣な人間共と学ばれる必要性がわかりません」
「それは言い過ぎだよメイヴィス……」
こいつはどういうわけか俺を神様か何かだと思ってる。銀髪を肩でそろえた優男だ。モテるだろうに、俺の信者ってわけ。残念な男。ちなみに19歳。
「どうせ、お母さまの言いつけなのでしょう?たまには世間を見てみるのも悪くないと思うわ」
最後に的を射たことを言うのは最年長で21歳のミサ姉。亜麻色の髪のみんなのお姉さんという感じだ。
「そう、ミサの言う通りなんだ。そういうわけで、しばらくギルドの仕事はできそうにないんだ」
「あんたの穴埋めをしろってことね。まあもともと最近引きこもってたじゃない?何も問題ないわよ」
まあ、確かにそうなんだけど。メイヴィスの目が怖いよ。
「あいにいくのは、だめ?」
スイが悲しそうに聞いてくる。
「たまになら大丈夫だぞ」
じゃあ、あとはよろしく――と、俺はギルドを後にして、新生活の扉を開いた。
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