その正体、『X』

序幕

――なあ、最強っていいよな？

どんな敵キャラの攻撃も受け流し、最上級の魔法を息一つ乱さず放ち、自分の隊があり、目上にぞんざいな態度をとっても怒られず、イカした肩書きをつけた、正体不明の世界No.1。

仮に正体を知られても大丈夫だ。彼らは甘いマスクと人を惹き付ける魅力があるから、たとえ身分詐称でも、気分次第で国一つ滅ぼせても、魔王を使い魔にしていても、許され、受け入れられるのだ。

さて、俺もまた上記のとおり、世界最強の名を戴いた者だ。
俺にとって魔法は呼吸をするのと同じこと。自分のチームと肩書きもある。
だが残念なことに、俺は対人関係が苦手だ。