<風>の日常

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 北に位置する<風>の国――。  ある日の朝、軍の本拠地では、周囲から密かに“朝の名物”として親しまれている光景が繰り広げられていた。 ―――――――――― ―――――――― ―――― 「おっはよーっ!!」  本拠地の一階にある食堂に、朝から元気な明るい声が響く。  食堂のおばちゃんたちは皆笑顔になって、入口を見やる。  入口には、先頭に立つ背の高い茶色い短髪の青年と、その後をゆっくりのそのそ歩く2人の青年。 「おはよう、晴ちゃん!  今日もげんきがいいねぇ!」  1人のおばちゃんが声をかけたのは、先頭に居た青年。  <風>副リーダー、夏目晴紀、24歳。 晴「俺いつでも元気だよ!  おばちゃん、いつものやつお願いねっ」 「はいよー、秋月さんと佐々野さんも、いつものでいいかい?」  おばちゃんは後ろの2人に声をかけた。  スラッとした体格、クールな雰囲気を纏った青年が、 <風>リーダー、秋月蓮、23歳。  そしてもう1人の、小柄でどこか幼さを感じさせる顔立ちの青年が、 <風>副リーダー、佐々野悠也、23歳。  秋月は低血圧で朝が弱く、佐々野は昨晩遅くまで部下とオセロで対決するというおよそ副リーダーらしくない事をしていた。  そのような感じで、2人は朝、どうにもテンションが上がらない。というかむしろ不機嫌である。  それに対して、異様に朝から元気なのが1人。  <風>で親しまれる光景というのが、これである。 晴「うひゃひゃ、サノ、起きてる?」 悠「……………」  (無言で夏目を睨む佐々野) 晴「ほらも~、もっと楽しく食べようよ!清々しい朝食だよ、朝食っ。  ねっ、秋蓮!」 蓮「………は?」 悠「黙って食ってろよ」 晴「そんなこと言わないのー」 蓮「っつーか人の食いもんに手出してんじゃねーよ」 晴「うーわ、コレちょーうめぇ!!  ね、ねっ、サノ…」 悠「だぁから黙って食えよ!!  何で朝から騒げるんだよ…」 蓮「……………はぁ」  一見喧嘩しているようにも見えるが、これもいつものやり取り。  周囲は笑いながらその様子を眺めていた。  こうして、3人の1日が始まるのだった。 .
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