ただ1つの選択肢

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――――――――― ―――――――  静けさに包まれた、少し肌寒い満月の夜。  本拠地の屋根に登ると、国を見下ろせる屋根の端っこに腰掛けている咲くん。  その背中は何だか小さく感じられた。 蒼「さーくくん」 咲「お、どーしたの蒼くん」  こんな時間に珍しい、と笑う。  でもね……俺には分かるよ。  無理、しまくりじゃんか。 蒼「咲くん……聞いてもいいか?」  咲くんの隣に腰をおろして、街の景色を見下ろしながら聞いた。 咲「何を?」 蒼「隠すなよ。泣きそうじゃねーかよ」  そう言って視線を景色から咲くんに移し、見開かれた大きな目を見つめる。 咲「な、に…言って」 蒼「秋月蓮」  俺が咲くんの言葉を遮ってその名を呼ぶと、ほんの少し表情が強張った。 蒼「……話してくれる?」  できるだけ、優しく聞いた。  すると、咲くんはしばらく黙った後、ぽつりと話し始めた。 咲「俺……前に話したじゃん?」 蒼「…消えた恋人さん?」 咲「…………………蒼くん、貴方ほんとに…何者…?」 蒼「なんとなく」  咲くんは少し苦笑して、そのまま話し始めた。 咲「そっ…か。  …前も言ったけど、俺、何とかして忘れようって……何度も何度も、忘れようと頑張ってきた」 蒼「…うん」 咲「そしたらね、今日、思いもしなかった場所で……再会しちゃったんだ」 蒼「…うん」 咲「自分が信じられなかった。  もう、3年も経った……  …未練なんかないと思ってた……。  でも、あいつを見た瞬間、戦闘中だってのに…身体が動かなかった」 蒼「……うん、危なかった」 、
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