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咲くんは自嘲するみたいに少しだけ笑って、目を伏せた。
咲「…今日、思い知らされたよ。
俺はまだ引きずってんだって事。
……二度と、元には戻れない事 」
蒼「……咲くん……」
咲くんの声、最後は少しだけ震えていた。
俺は思わず、その身体を抱きしめた。
咲「……蒼、く…?」
蒼「吐き出せ、咲くん。
今、誰もいないから。俺だけだから」
咲「……ッ…!」
蒼「我慢すんなよっ、たまにはリーダーらしい事させろって。
よく堪えたよ……よく頑張ったな…」
咲「……っずりぃ…ッ…!」
ずるいよ、貴方。
途切れ途切れにそう言ってから、咲くんは俺の腕の中で、服にしがみついて泣き出した。
咲「…ッく…ぅ……!」
俺は黙ったまま、咲くんの背中をあやしてやるだけ。
咲「…ッんで、……何でだよっ……
何でっ……こ、な…時期にっ…
こんな、形で………!」
俺は以前、咲くんから、消えた恋人さんの話を聞いた。
話を聞いただけなのに俺は、咲くんとその恋人さんが……本当に愛し合っていたこと。
咲くんが、まだその人を好きだということを悟った。
その時、俺はこう言った。
『きっと、恋人さんにも何か理由があったんだよ。
だから、無理して嫌いになんなくてもさぁ、いいんじゃねぇ?
いつかまた奇跡的に会えたら、理由を確かめて、もっかい付き合っちまえ……まだ、すきなんだろ?』
『………うん。
ありがと、蒼くん…』
でも。
その奇跡の再会は、悲しすぎる形で。
秋月は、俺らがこれから戦争をする相手国のリーダー。
咲くんはウチの副リーダー。
2人の選択肢は、たった1つ――。
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