最終電車の終着駅で

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最終電車の雰囲気はなぜか僕に孤独を感じさせた。 倦怠感が体を覆っている。 僕はその身をシートに深く下ろしている。 向かいの車窓に映る自分の姿が、ずいぶんとやつれている。 僕にはそれが僕自身ではないように感じる。 何人かが立っている程度の混み具合の車内ではあるが、朝のそれと違って雑然としていた。 ひどい臭いが鼻腔をついて僕は顔をしかめる。 アルコール、香水、人の汗の臭い。 体は目的地へ進んでいるのに、精神はそれについてきていないかのような感覚。 乖離間。 20代も残り3年となった。 僕の中の10代の気持ちは、まるで孤独な猫のように死んでしまった。 東京。 夜の明かりが流れている。 音楽だけは変わらない。 イヤフォンから流れてくる声。 変わらない。 僕は新しい喜びを見つけることすら止めてしまった。 不意に大きな笑い声が響く。 黒髪の少年が仲間の肩を叩いている。 僕は音楽の音量を上げ、少年達の放つ音を殺す。そして小さなため息をつく。 車内の天井を見上げた。 宙吊り広告が政治家や大企業の不正を示唆する。 情報過多な世界。何が正しくて何が間違っているのだろう。 不意に蛍光灯の明かりが瞬く。 何かの合図のようにチカチカと。 何が起きているんだろう。 僕は蛍光灯をにらみ続ける。 そしてその明かりは音もなく死んでしまった。 車内に暗闇が訪れる。 音は聞こえなくとも車内の混乱を感じる。 そしてきっかり13秒後に、再び明かりが点く。
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