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開けたドアからは消毒薬の匂いが微かに香りその中央にはベッドの上で上半身だけを起こし軽く微笑む女の人が見えた…
杉浦さんのお母さんだ…
小さい頃に何度か会っただけだけれど、お姉さんとそっくりなその顔立ちをしているから一目でわかった。
『今晩は、遅くに申し訳ありません私…』
「菜緒さんでしょう? 輝彦くんから聞いてるわよ」
遠慮がちに発した私の言葉を遮るようにそう呟くお母さんは、どうぞ座って。と目の前に置かれた椅子を見つめ促す…
ドアの前で頭を下げ掛けていた私は慌てて頷きその椅子に腰掛け、すぐに持っていた花束を渡すとお母さんは心底嬉しそうな顔を浮かべ ありがとう。と笑ってくれた…
「菜緒さんは、奏の恋人よね?
って当たり前か…ただの友達が私なんかに会いに来たりはしないものね」
自嘲気味に笑うお母さんを見つめ私は小さく頷いた…
「あの子、元気にしてる?
もう長いこと会ってないから今はどうしているのか分からなくて…
輝彦くんに聞いても 自分で会って確かめてみたらと意地悪言うものだから、本当に分からなくて…
元気にしているかしら?」
『はい…今は仕事が忙しくて県外に行ったりしていますが、凄く元気にしています』
私の言葉を聞いたお母さんは視線をシーツに向け、そう。 なんて少しホッとしたような顔を浮かべた…
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