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「奏から私の事は聞いてるかしら?
輝彦くんは貴方の事について名前以外何も言わなかったから分からなくて…
でも一緒に来なかった所を見ると会いたがっていないのね あの子」
『いえあの、実はまだ話していないんです…お母さんが入院なさっている事』
え? なんて驚いた顔を向ける彼女に慌てて言葉を紡ぐ…
『勘違いしないでください、故意に言わなかったんではなくて出張に行っていて連絡がつかなかったんです』
「……そう。
だけど…話した所で奏は来ないわよね、きっと」
シーツを見つめたまま寂しそうにそうポツリと呟くお母さんに そうじゃないと言葉を取り繕う事も肯定する事も出来ずにただその姿を見つめる事しかできなかった…
静かな病室に沈黙が降り注ぐ…
私はその間 過去の杉浦さんの事を思い出していた、昔から特別優しいって訳でも無かったけど、だけど私が涙を流している時…
1度も泣いている私を咎める事が無かった。
お姉さんが慰めてくれている時には部屋の隅で見守ってくれていて、お姉さんが居ない時には恐怖に怯える私の頭を撫でてくれていた…
そんな杉浦さんをいつも責めていた両親、
反抗的だった訳でもなく、成績もハッキリとは分からないけど悪くも無かったはずの彼を。
そこでどうしても拭えない疑問が頭に浮かび、私は広がる沈黙を破り重い口を開いた。
本当は私が聞くべきじゃないんだろうけど…だけどどうしても知りたい。
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