二章

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青年は愛紗に気づいたようだ。 「こっちは……」 「関羽。有名だから知ってる」 「関羽だ。以前はご主人様を救ってくれたことに感謝する」 手を合わせてから愛紗は青年に頭を下げる。 「大したことじゃないから礼を言われることはない」 「しかし、助けてくれたのは事実だ。今度礼をさせてくれ」 頭を下げ続ける愛紗に青年は居心地が悪そうに頬をかく。 「その内頼むよ」 そう言うとやっと愛紗が頭を上げた。 「で、お主は何を?」 「昨日釣った魚が余ったからな。売りにきたところだ」 「すっごく釣ってたもんな」 「とりあえずは帰るところだ。天の御遣い様」 一刀の隣に立って、愛紗に聞こえない声で囁く 「また会おう。その時、お前はこの世からいなくなる」 「え………?」 隣を見ると、青年はすでにいなかった。 「ご主人様、警邏に戻りましょう」 「あ、あぁ。そうだな……」 青年の言葉を気にしながら、一刀は愛紗の元へ小走りで行って警邏を再開する。
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