三章

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それから全員は何も言わずにただ太公望を見ていた。 「……………俺は仙人、太公望。北郷一刀を……」 「いや、二回言わなくていいから」 同じことを言おうとした太公望を止める。 「誰も何にも言わないから聞こえなかったのかと思った」 「聞こえなかったわけじゃないんだけど……実感ないっていうか」 「ご主人様の言うとおりだ。太公望、だったか?」 「そうだ」 「太公望、貴様が仙人ならば何故ご主人様を狙う」 愛紗が目付きを変えて太公望に聞く。 「それをお前たちが知る必要はない。ただ、北郷一刀を渡してほしい」 「嫌なのだ!」 鈴々が一刀の前に立ち『丈八蛇矛』を構える。 それに便乗して武将全員が自分の得物を構え、月や詠、璃々と朱里と雛里は桃香と一刀を連れて後ろに下がる。 「…………」 囲まれても焦る様子1つ見せない太公望。むしろ笑っているようにも見える。 「主を連れていきたければ……」 「あたし達を倒してからにするんだな!」 「容赦はしません!」 星、翠、紫苑が皆の気持ちを言う。 「さすが天の御使い、人望が厚い。だからこそ、危険なんだ」 「何?」 「ま、いいさ。どうせ穏便にはいかないと思っていたし」 立ち上がり、太公望は釣竿を肩に担ぐ。
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