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――その時、 男がぴくりと 何かに反応する。 そして、刀をゆっくり あたしの首から下ろした。 ――刹那、男の刃は いつからいたのか、 男の後ろにいた もう一人の男の喉元に 突きつけられる。 あたしには、 もう一人の男が いつからそこにいたのか 全然わからなかった…。 「…さすがは沖田総司。気配を消してたつもりだったんですけどね」 刃を突きつけられてるにも 関わらず、余裕そうに 笑っている。 「それで消してたつもりですか??気配駄々漏れでしたよ」 「……いいねぇ。俺は沖田みたいな強いやつと久々に戦いたかったんだ、よっ!!」 そう言ったと同時に、 もう一人の男も 腰にさしてあった刀を しゃっと抜く。 「…キミに呼び捨てにされる筋合いはない!」 ―――ガキン! 刃と刃が激しく ぶつかり合う音。 「……………。」 あたしの目の前で、 ふたりの知らない男は 戦い始めてしまった。 なにがなんだか さっぱりだが、 さっきまでの 首に刀を当てられていた 緊迫感から解放されて 若干の安心感を覚える。 けど、ふいに あたしの足は その安心感のおかげで 力が抜けてしまった。 がくっと床に膝を ついたところで、 床に広がっている血の臭いに 襲われ、吐き気がする。 …クラクラして、 めまいがしてきた。 気持ち悪い 気持ち悪い 気持ち悪い…! 目の前が歪むように ぐにゃぐにゃして頭も痛い…。 ふわっと意識が 遠くなっていく……… ――――ぷつん… 部屋の電気を消すように、 あたしの視界は 一瞬にして真っ暗になった。 激しい刃のぶつかる音も もう聞こえない。  
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