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「ま。まだ殺すって決まったわけじゃないから、安心しなよ」
あたしは未だ嘲笑を
浮かべたまま
そう言う沖田総司を
キッと睨み付ける。
「殺すに決まってる!」
「なんでそう思うの」
「…だって、あたし…こんなに怪しいし!!」
自分の今の姿は、
パーカーにジャージのズボン。
江戸時代では、
着物が当たり前だから
こんな格好をしている
あたしはだいぶ怪しい。
さっきからの
あたしの発言も
この時代の人からしたら
怪しいこと極まりない。
「へえ、怪しいって自覚はしてたんだ」
「………。」
……ついさっきまで
あんたのこと、
凄い変なやつだと
思ってたけど、変なのは
自分の方だったと言うね……。
「確かに怪しいけど、尋問でキミが正直にすべて話してくれれば命まではとらない。僕らにだって情け心はあるからね」
…話すことなんて
何もないよ……。
あたしはあなたたちが
望んでるような情報は
何一つもってないんだから。
「………。」
「キミ名前なんだっけ??」
そんなあたしをよそに、
沖田総司はふと思い付いた
ように尋ねる。
…さっき名乗ったばっか
なのにもう忘れるとか…
「…綾瀬捺佳」
「あぁ、そうだったね」
「…………。」
このひと、あたしの名前
覚える気あるんだろうか……。
「綾瀬ねぇ…。初めて聞く名字だなぁ…キミは長州の幹部の連れかなんかかと思ってたけど、僕が知る限り長州の切れ者に綾瀬なんていなかったし…」
沖田総司は首を捻る。
「だからあたし長州の人間じゃありませんってば!」
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