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「そんな見え透いた嘘はやめな」 「嘘じゃない!ほんとに、ほんとにあたし長州のこと何にも知らないの…」 「じゃあ、どうしてあの時キミは池田屋にいたの??あの日池田屋には長州派の幹部以外出入りできなかったはずだ」 沖田総司は探るように 鋭い視線をあたしに向ける。 「そんなの、あたしにだってわからない…いつの間にかあそこにいたの!」 「……あんまりふざけたことばっかり言ってると、ほんとに斬るよ??」 「本当にわからないのっ!!!!」 伝わらない もどかしさから、 あたしはつい金切り声を 上げていた。 「…………。」 「あたし、本当にわからないの…なんで自分がここにいるのか…どうやってここに来たのか……なにも、なにもわからない……」 そう言うあたしの声は 震えと荒い息遣いで 次第に弱々しくなっていく。 「……っあたし、こんなとこで死にたくない…っ!帰りたい…!!」 平成に帰りたい… 家に帰りたい… 皆に会いたい… お父さん、お母さん…! 「…誰か、誰か助けてよお!!」 呼吸が乱れるなか、 出来る限りの声を 絞り出す。 …けど、そこからは 意識がもうろうとして 覚えてない。 ただ、急に力が抜けて、 畳に倒れ込んだのはわかった。  
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