7/12
前へ
/166ページ
次へ
「「「いってらっしゃ―い」」」 3人に見送られ、 あたしと慎太郎は トンネルに入っていった。 …もはやあたしは 半泣き状態だ。 ――ザッ、ザッ トンネルの中には あたしたちの足音しか 聞こえない。 あたしはどうも落ち着かず、 歩きながら キョロキョロと 周りを見渡す。 ……暗くてよく見えないけど、 上の方にコウモリがいる ように見える…。 道にはガラスや 車のサイドミラーなんかも 転がっていて、 来る途中には隼人が 言ってたことを思い出した。 『幽霊に悪戯されて 幻をみたり、 ハンドルが勝手に動いたりして 車の事故が後を絶たない』 「…………。」 背筋がぞっとするのを感じた。 ふと気になって 横目で慎太郎を見ると、 相変わらず眠そうにしている。 「………慎太郎…」 そんな大きな声で 喋ったわけでもないのに トンネル中に あたしの声が響き渡る。 「……なに??」 慎太郎は表情はそのままで、 首だけこっちに向けた。 「……怖くないの??」 そう聞くと、 「……別に……」 とぶっきらぼうに答える。 と同時に、 急に慎太郎が足を止めた。 「………??どうしたの…??」 「…………。」 慎太郎は前を見据えたまま 動かない。 「…慎太郎??」 もう一度呼び掛けると、 微かに慎太郎の唇が動いた。 「………~~……」 あまりにか細い声で、 何を言ったのか 聞き取れなかった。 「え、なに??」 あたしは慎太郎に 2・3歩近づく。 「…………ち…」 慎太郎の声が さっきより はっきり聞こえる。 …………"ち"?? "ち"………って…… あたしの心臓が どくんと 激しく脈打つ。 ――――"血"…?? 「……血の、臭い……」 慎太郎の言葉に、 あたしは言葉を失う。 さっとトンネルのなかの 空気も変わった気がした……。  
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

159人が本棚に入れています
本棚に追加