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暫し呆けていたらしい俺を引き戻したのは腕の中身じろぎした少年の動きで、俺は少年を逃さぬように再びキツく抱いて顔を上げさせ涙をツツと舌先で舐め取り
「…お前…、名前は……?」
久方ぶりに出した己の声は声の強弱がてんでバラバラで、些か恥ずかしくなったがそれを堪えて目を見つめれば少年はぽってりとした唇を開き
「ぎん…とき……。坂田…銀時……。」
「銀時…か……」
いきなりの吸血行為でわけもわからず貧血状態に陥っている我が身に混乱しているのか、銀時は大きな瞳からまた新たな涙をポロポロと零しながら名前を答え、不安に揺れる紅い瞳でこちらを見つめている。
俺は銀時に俺の正体を包み隠さず全て話して聞かせ、銀時はにわかには信じ難いといった体だが取り敢えず理解はしてくれた様子でただ黙って頷いていた。
最後に、俺が銀時に抱いた感情も話し二度と離したく無くなってしまった旨も話せばさすがにこれには驚いたのか困惑した表情を浮かべて瞳を泳がせ、しかし少しの間考えた後頷き意外にもわかったと答えて受け入れてくれた。
これからはここに住んでくれと頼めばそれにも頷いて了承し、かくして俺達はこのオンボロ屋敷で恋人同士として共同生活をする事になった。
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