渇き

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右側頭部の鋭い痛みに飛び起きてみれば辺りは既に暗く、未だクラクラする頭を抱えてみれば何やら布の感触… 「あ…、起きた…?」 突如聞こえた何者かの声にビクッと肩を跳ねさせそちらに顔を向ければ、それはそれは見事な銀髪頭の少年が立っており、少年のそのあまりの白さにこの部屋の暗さも相俟ってまるで発光しているかのように見えたのだがそれは見間違いで、どうやらボロいカーテンの隙間から洩れ入る月明かりに照らされていただけのようだ。 喋る相手が居らず久しく声など出していなかった喉から何か言葉を…と口を開くのだが、声の出し方すら忘れたかのように声は発せられずただ乾いた音だけが零れ出るばかりで、そんな俺を訝しむように眉を寄せ首を傾げた少年は俺に歩み寄り額に触れ 「…いきなり殴ったりして悪かった…。俺を追い掛けて来た奴らかと思ったんだ……」 銀色の長い睫毛に縁取られた瞳は血の様に紅く、まるで柘榴の様に艶々と光を受けて輝くそれに俺の瞳は釘付けになり、呆けたかのように暫し言葉を失っていると少年はクスクスと笑い 「やっぱりこのナリは珍しい…?」 そう尋ねて小首を傾げてみせる仕草は幼いというのに、まるで毒のように妖艶で… 眼前に晒された真っ白い首筋に飢えた俺の瞳はその機能を忘れたかのように止まりゴクリと生唾を飲み、いっそ神々しいまでの白い身体を無意識の内に抱き寄せ首筋へと舌を這わせ、ビクリと強張る細い身体をキツく抱いて首筋へと牙を突き立てれば、今まで飲んだどの血よりも甘くまるで果実酒のように俺を酔わせる味が咥内へと拡がりゾクゾクと身震いし、ある種快楽にも似た感覚に浸りながら血を飲み下してゆきやがて牙を引き抜けば涙に濡れる紅い瞳と目が合い、俺の心は一瞬にしてこの紅に捕われた…。
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