渇き

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いつだったか、伴侶にしようと決めた女が居た。 緩くウエーブの掛かった柔らかな栗色の髪の女で、そりゃあイイ女だった。 優しくて気立てが良く何より俺を愛してくれた。 俺も女からの愛に応えて契りを結ぼうと思ったのだが、約束の日になっても女は来なかった。 確かに愛し合っていたと信じていた俺は女を信じて待ち続けたが、女が現れる様子も無く痺れを切らして屋敷から出れば、女はここに来る途中にある森の中暴漢どもに散々弄ばれ死んでいた。 俺の中の何かがこの時また一つ歪み凍り付くのを感じ、いつの間にか俺は凶行に及んだ男達を見つけ出し皆殺しにしていた。 ただ憎くて、憎くて、憎くて、堪らなかった… 気付いた時俺は真っ赤な血溜まりにうなだれて立っていて、虚しさだけが募る中屋敷へと引き返し道すがら女の遺体を大事に大事に抱えて帰り、屋敷の裏庭に埋葬した。 悲しいなんて感情が無ければ良かったのに…とすら思う程泣いて泣いて泣いて、泣き狂ってしまいそうな程痛い胸の傷をごまかす為に、俺は悲しみの感情と愛し慈しむ感情を封印した。 …でも、この少年なら…… いや、この少年こそは… 誰の手にも触れさせない。 もうコイツは俺の物だ…と、もう何百年も封印されたまま忘れ去られていた感情達が疼く。 ああ、駄目だ…。もうごまかしは利かない…。 俺は、コイツが欲しい。
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