相互理解

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あれから俺達は先ず互いを知る為に自分の事についてなど、色々な話をした。 銀時の話はただ無感情につらつらと事実だけを述べたものだったが、その内容はあまりにも凄まじいものであった。 まず、銀時の血筋は代々医師を生業としている由緒正しい旧家のもので、両親は残念ながら事故により他界して本家筋の人間としては最後の生き残りであるらしい。 今は分家の人間がしゃしゃり出て来てまだ幼い銀時を放り出す事により当主の座を半ば無理矢理引き継ぐ形で収まり、可哀相に追い出されてしまった銀時は両親どころか帰る家すら奪われみすぼらしい孤児院に入れられていたのだという。 銀時の入れられた孤児院の経営者はまさしく金の亡者のような男で、子供達を奴隷なり何なりとにかく金になる方法で売りに出していたらしい。 見た目の良い者は性的な商品にされる事が多く、見た目の悪い者は臓器売買の市に出される事が多かった…と銀時の口から聞いた時は、それが本当に心を持つ同じ人間同士のする所業なのかと思わず戦慄した。 本当に、人間とは空恐ろしい生き物だ。 幸運にも銀時は見た目が良かった為臓器売買の方には流されなかったらしいが、それでも思わず耳を覆いたくなるような悲惨な暮らしを強いられていた事に変わりは無く、まだこの年の子供は知らなくても良いような様々な知識と経験だけは積み重なり、そうこうしている内に遂に銀時を欲しいとの声が掛かったらしい。 銀時を買いたがったのはショタコン趣味の気味が悪い太った変態オヤジで、銀時は奴に抱かれるくらいなら死んだ方がまだマシだと考え、どうせ同じ死ぬなら最後の悪あがきをしてやろうと孤児院を脱走して来たのだという。 失敗すれば舌を噛み切るなり何なりして死ぬつもりだったと語る銀時の表情はどこまでも力無く、疲弊しきったその姿はいっそ憐れにも見える。 追っ手をかわしてずっと逃げ続けて疲れ果てていた為、昨晩この屋敷を見付けた時は勝手に入るのは悪いと感じつつも休憩の為に入り込んだらしい。 ここにもじきに追っ手が追いつくだろうが、その時は俺が出て行って知らぬ存ぜぬを貫き通し追い返せばそれで済むだろう。 俺が帰って来ていて本当に良かった。
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