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「おはよう、春ちゃん」
もう照れも何も無く、するりと口から出て来た言葉。時々オレの意思とは別に動いてる気がするのは、この体が長年培って来た経験からだろうか。
「昨日はごめん、早めに寝ちゃって……」
「ううん、気にしないで!相澤くんと急接近したから、緊張しちゃったんでしょう?」
「あー……」
私、応援してるから!みたいな顔してるなぁ、皆川。前の高瀬夏希はそうでも、オレは友達としか思えないから恋愛的進展を求められても困る。ああ、男女ってめんどくさい。
「相澤くんもなっちゃんを意識してるっぽいし、大丈夫、あと一押しだよ!」
そこが、ちっとも大丈夫じゃないんだよな。そもそも何故かトータがオレに気があるのが大問題なんだ。皆川みたいな美少女ならともかく、散々女顔と言われてたオレも実際に女になりゃあ、そこまで可愛い訳でもない。
向こうの皆川との関係性を考えると、こっちのトータとは高校入るまで会ったこともなさそうだし。この一週間で双方まともな会話が出来てる様子も無いから、本気できっかけが分からない。
「あ、あのさ春ちゃん……何でオレってトータ、くんのこと、好きなんだっけ……?」
自分でも何言ってんだろと思ったけど、皆川は笑顔で答える。
「教室に入ったときから、一目惚れって言ってたよ。顔がまずめちゃめちゃタイプだって。それから、目で追ってる内に本気になっちゃったって」
…………だよな、アイツ、イケメンだもんな。正直、皆川好きになったのも顔からだし、高瀬夏希は悲しいことにただ面食いなだけだ。そのくせ、いざ目の前にすると会話すらままならないコミュ障状態。駄目だこりゃ。トータに惚れられる要素を全く感じない。新しく、学校の七不思議に選ばれてもおかしくないくらいに。
「とにかく、朝会ったら笑顔でおはよう、だよ!」
「あ、うん……」
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