53人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
ここで初めて、トータの様子がおかしいことに気付いた。目が合ってない。正面向いてんのに、明らかに視線は横に逸らしてる。そんでもって妙に顔が赤い。そして、トータがこんな辿々しく話してるとこなんて見たことない。
「ご、ごめん!話の内容がよく分からないけど……と、とりあえず距離、近くないかな……?」
なのに、この態度には既視感があった。オレだ。オレが皆川に限らず、過去に好きな女子を前にしたときの反応だ。と言っても、オレよりかはトータのがちゃんと会話になってるけど。
「あ!お、俺そう言えば用事があって……その、じゃあまた!!」
そんなことを口にして、急いで教室を出て行った。嘘だろ、あのトータが!困って逃げ出すとか!!
急展開に頭が追い付かず、呆然としているといつの間にか皆川が傍に来ていたようで。
「どうしたのなっちゃん!?相澤くんに、自分から話し掛けるなんて!!」
と、更に脳内処理が困難なことを言った。
「え、え?どう言うこと??」
「今日のなっちゃん、いつもと何か違うよね?具合悪くない?大丈夫?」
「ぴぎゃあああぁぁっ!!!」
はい、今奇声発したのはオレです。高瀬夏希です。だって、熱を測ろうとしたのか、皆川が自分とオレのおでこを触ってんだぞ!?まともな言葉の交わし合いすら出来ないオレに、こんなん耐えられるかー!!
「うーん、熱……あるかよく分かんないや!やっぱりちゃんと保健室で測ってもらおっか!」
「あ、あっ……あうう」
結局、保健室に行ったら微熱があるってことでベッドで休むことになった。早退するか聞かれたけど、ケーキが惜しいのでその選択肢は除外。昼休み、一眠りしたら多少気分も落ち着いて、腹も減ったので教室に戻ろうとしたら。
「大丈夫?なっちゃん。お弁当持って来たよ」
と、皆川が訪ねて来たので保険医の許可をもらってここで一緒に昼食を取ることになった。
最初のコメントを投稿しよう!