当日

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  ***  午後、教室に戻るとトータと目が合った……のに直ぐ逸らされた。そして、オレから離れて自席に戻った皆川に近付いて『高瀬さんは大丈夫?』的なことを聞いている。いや、本人に聞けよ。  そんなトータの姿を見て認めたくはないけど、どうやら奴はオレに惚れちゃっているんだと認めざるを得なかった。ああ、複雑過ぎる。まさかのトータが、好きな相手とまともに話せなくなるタイプだとは思ってなかったし。でもアイツ、中学のとき普通に彼女居たよな?まぁ、コクられてとりあえず付き合ってたみたいだから、そう言った感情は無かったのかもしんない。  しかし、これじゃあトータと友情を育むのは難しそうだ。ここでは状況が違うとは言え、トータは大事な親友。出来れば失いたくなかった。つか、さっき寝たのに何で夢から覚めないんだろうか。もしかして、今までの男での人生が夢だった?いやいや……。  そんな考え事ばかりで授業内容に集中なんて出来る筈も無く、気付けば帰る時間になっていた。多分こっちでも部活には入ってないだろうから、帰宅する気満々で支度する。 「なっちゃん、帰ろう!」 「あ、うん」  皆川に対する免疫が出来たので、もうこのくらいで赤面することはない。オレが鞄を持って教室を出ようとすると、まさかのトータが近付いて来た。 「あのっ……高瀬さん!!」 「な、何……?」 「お、俺も途中まで一緒に帰って良いかな……!?」  マジかよ、つい数十分前に関わることを諦めたってのに。流石は腐ってもトータ、好きな奴に話し掛けようって度胸はあるようだ。オレが唐突な展開に呆然としていると、皆川が笑顔で。 「もっちろん!何なら、一緒に寄り道もしようよ!ささやかだけど、なっちゃんのお誕生日祝いする予定だったの!」  と、暴露してくれた。そういや、トータも帰り道で奢ってくれたりしてたなぁ……なんて、遠い昔の出来事みたく思い出される。 「ああ、そっか!高瀬さん、誕生日おめでとう!!」 「あ、ありがとう……」  立場が変わっても、コイツは誕生日を祝ってくれるんだな。何だか凄く胸にきた。
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