当日

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「それじゃあ、しゅっぱーつ!!」  皆川が先頭で、学校を出る。入学して一週間とは言え、中学とさほど離れていない高校なので通学路にある店は大体把握している。でもやっぱりこのトータは地元がここら辺じゃないみたいで、何故か得意気にバスガイドの如く周辺を案内して歩く皆川に、楽しそうに相づちを打っている。  そして、辿り着いたのは……場所的にはオレの知るトータの家なんだけど、そもそも建っている建物が全く違うものになっていた。 「こちらが、わたくし皆川春香の自宅でこざいまーす♪」 「おおー!」  だと思った。ってことは、多分これは本物の皆川家なんだろうな。ますます謎だ、この夢。いや、もう流石のオレもこれをただの夢だなんて思えなくなって来ていた。かと言って、じゃあ何だって説明出来る訳じゃないけど。 「そしてここが、本日の高瀬夏希誕生日パーティー会場となっております。ささっ、相澤くんもどうぞ!」 「えっ?俺も入っちゃって良いの!?」 「うん!一緒になっちゃんのお祝いしよー!!」 「ホントに!?ありがとう!」  ……何か、えらいことになってるなぁ、いつの間にか。  先行く皆川に続いて、家の中へと入る。当然だけど、トータの家とは違う。なのに何処か懐かしい感じがして不思議だ。案内されずとも、皆川の部屋の場所が分かってしまう。  そのせいか、好きな子の部屋だと言うのに全く緊張しない。無意識に体が動いて、オレは真ん中にある小さなテーブルの周囲に置かれた向かって左のクッションの上に座る。きっとここが、高瀬夏希の定位置なんだろう。  皆川が飲み物を取りに行っているので、オレの隣に座っているトータと二人きりになる。もちろん会話は無い。話し掛けても良いけど、おどおどと返されてもこっちのダメージがデカいだけだし。  と、思っていたのに流石は基本お化けコミュ力。目を泳がせながらもオレの方を向いて。
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