当日

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「あの、高瀬さん……今日はホントにおめでとう!」  なんて、更に祝いの言葉をくれる。 「あはは、ありがと」 「で、でもホントに俺も上がっちゃって良かったのかな?その……女子の部屋、だし」  皆川がそう言うの気にしないタイプな気がするのもあるけど、多分彼女はオレのためにトータを誘ったんだろう。まぁ、オレっつーか元々の高瀬夏希だけど。 「別に、友達なんだから気にする必要ないと思う。トータ……くんが悪い人じゃないの、何となく分かるし」 「ふえっ!?」  ああ、トータの緊張感が増してしまった。ついつい名前呼んじまったし。けどさぁ、今更『相澤くん』とか余所余所しい呼び方しろとか、無理だろ。向こうのアイツと立ち位置違うって理解してるけど、トータはトータなんだから。 「そうだよ。こうやって誕生日を祝ってくれる仲になったんだから、この際お互い名前で呼び合わない?ぶっちゃけ『高瀬さん』とか慣れなくて気持ち悪いし」 「えええっ!?」 「あと、連絡先もな!お互いクラスのグループには所属してるけど、個人的には繋がってないみたいだし。ほら、電話機出せ!」 「はいぃ!?」  そんなやり取りをしてる内に皆川が戻って来て、お菓子とジュースを持ったままその場で硬直してる。うん、言いたいこと分かるよ。こんな好きな人に積極的なオレは、見たことないってやつだろ。  だって、オレはオレ。今の高瀬夏希は、相澤冬太郎と友達でありたいだけなんだ。訳の分かんねー状況になっちまっても、この気持ちだけは変わらない。  その後は間食しつつ何だかんだで皆川も含めた三人での連絡グループを作り、トータのオレの呼び方が『ナツキちゃん』に決まったところで今日は帰ることになった。 「あ、あのっ……な、ナツキ……ちゃん……その、今度、プレゼント渡すから……!」  皆川がオレにプレゼントを渡すところを見て、トータが言う。 「別に要らないよ」 「駄目だよ!!と、友達……なんだから、ちゃんと渡したい」 「……分かった、楽しみにしてる」  悔しいことに、どこをどう切り取ってもコイツはオレの知ってるトータだ。だから、またここから始め直すんだ。
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