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自宅に帰ったオレを待ち受けていたのは、念願の誕生日ケーキだ。実を言うと皆川の家でもカットケーキを一切れもらったのだけど、それはそれ。
我が高瀬家には、一年に一度の自分の誕生日ケーキは、好きなだけ食って良いと言う決まりがあるのだ。こっちの世界でも変わりは無いようで、オレが限界を超えてホールケーキの半分以上を食い尽くすと、隣に座る里夏はドン引きって顔をした。これもまた、毎年恒例の光景だ。
好物をたらふく味わい、なるべく目を閉じたまま何とか風呂も終えて自室に戻ると、早速三人の連絡グループにメッセージが入っていた。皆川だ。
【なっちゃん、ケーキはいっぱい食べられた?】
流石はこっちでの幼なじみ、高瀬家恒例行事もご存知のようだ。
【もちろん!今年は半分を超えられたよ!】
すると、何かのキャラクターが笑い転げてるスタンプが返って来た。そこですかさず、間に入って来たのが。
【えっ?ナツキちゃん、どれだけのケーキ食べたの!?】
向こうと同じ、好きなスポーツ漫画の主人公をアイコンにしたトータだ。ちなみに、皆川はさっき家に行ったとき、部屋に置いてあったぬいぐるみ。オレは中学のときに修学旅行で行った、とある名所の風景画像にしてある。
しかし、文章だとレスポンス早いんだなコイツ。元々のトータを思えば不思議じゃないけど、さっきの会話ではどもってたし、オレの名前呼ぶのも一苦労だったのに。
と、オレがモヤモヤしてる間に皆川からのメッセージが入る。
【ふっふっ、聞いて驚くなかれ相澤くん!なっちゃんの家のホールケーキは、10号サイズだよ!】
何故かドヤ顔の皆川のスタンプの次に、驚いて目が飛び出したトータのスタンプが続く。
【それで半分以上は……凄いね!】
そして、今度は指を組んで目がキラキラしたスタンプ。
【なっちゃんは、お菓子の中で特にケーキが大好きだから。メモだよ!!】
【はいっ!!】
「……何やってんだ、コイツら」
当人を無視して、何か二人で盛り上がってるし。ここで更に、オレのモヤモヤが増す。そんな感情がバレないように、さり気なく腹がいっぱいなせいか眠くなって来た……と寝る方向に話を促す。
【そうだね、もう寝よっか!おやすみ、なっちゃん】
【おやすみ、ナツキちゃん】
そんなメッセージが同時に入って来て、二人の息のぴったりさにますます不機嫌になったオレは、おやすみのスタンプだけ押してさっさと布団に潜り込んだ。
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