翌日

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 自分でセットしたアラームに苛立ちながら目を覚ますと、そこは昨日と変わらない、少し違和感のある自室だった。寝ぼけ眼で近付いた姿見に映っているのは、やっぱり髪が長くて女子のオレ。残念ながら、二眠りしてみても男に戻ることは無かったようだ。  仕方無いので、腹を括ろう。昨日は後はもう寝るだけだからと妥協したが、流石にこのまま外に出る訳にはいかない。下手すりゃ痴女だ。  いざ検索、『ブラジャーの付け方』を。検索履歴が残ると何となく恥ずかしいから、プライベートモードで。 「……へぇ、ホックを前で止めてから後ろに回せば良いのか」  どうしても昨日は後ろ手で止められなかったから途中で諦めたけど、これなら何とかなりそうだ。目を閉じてると手元が狂うので、薄目で。それでも慣れない動作はなかなか上手く行かないし、手にぶつかる柔らかな感触で頭がおかしくなりそうなところを……耐えた。オレは耐えきった。  このまま元に戻れなきゃ、毎日これと戦わないといけないと思うと、かなりしんどいな。  まぁでも今日は無事に達成出来たので、次は制服に着替える。寝癖もさっと櫛を入れるだけで落ち着くので有り難い。大したケアをしなくても、比較的綺麗さを保てる髪質で良かった。  身支度を済ませてリビングに向かうと、いつもの光景だ。オレが男だったときから、変わらない。コーヒーを飲みながら新聞読んでる親父、朝食の準備をしてるお袋、不機嫌そうに食べる妹。昨日はテンパってたオレも、女の生活二日目なのでもう大丈夫だ。黙って出された物を食う。  食べ終わったら食器をシンクに運んで、歯磨きをして家を出る。高校に通い始めてから、自然と定まった時間。早過ぎも遅過ぎもしないちょうど良いタイミング。  それは彼女も同じらしい、待ち合わせ場所には当然。 「おはよう、なっちゃん!」  ここでの親友、皆川が居た。
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