週末

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「おっ……おはよう!きょ、今日は良い天気だね!!」 「あ、うん」  でもやっぱり相変わらずどもりまくりの、緊張モードトータだ。ここ数日で残念ながら、このトータにも慣れつつある。 「で、今日はどこ行く?」 「電車で三駅の、ショッピングモールにしようかと思ってるけど……」 「ああ、良いと思う。何でもあるし」  都会と田舎の中間辺りに属してると思われる、この地域一帯で一番デカい施設だ。それ故に知ってる奴との遭遇率も高い訳だが、正直そこはもう諦めている。  高校生になったばかりで、まだバイトも何もしていないオレ達に遠出するような資金は無い。ましてや、今日の目的はオレの誕生日プレゼントを探しに行くこと。贅沢は言えない。 「じゃ、駅に向かうか」  トータが頷いたのを確認して、先に歩みを進める。しかし、奴はここに来るために降りたであろう駅に引き返すことになってるんだから……やっぱり、待ち合わせ場所は変えるべきだったんじゃ? 「ナツキ、ちゃんのことを……もっと知りたかった、だけだから」  そう問うてみたら、何とも気恥ずかしい返答をされた。いやもうホント、何でオレ?コイツのスペックならもっと上を狙えるだろ。  色々考えてる内に駅に着いたので、ICカードを使って改札を抜ける。向こうの世界のトータは近所に住んでるから、こうやって一緒に電車で出掛けたこともあったっけ。小遣いに限りあるし、そんな多くは無かったけど。  通学に電車を使わないから、約半月ぶりにその振動に揺られる。それこそ、春休みにトータと遊びに行って以来だ。そうだ、高校入ると忙しいかもしれないからと早めにオレの誕生日プレゼントを買いに出掛けたんだ。今日みたいに。  いくつか店を回りオレが欲しいと思った物を何個かトータに伝えて、その内の一つをこっそりトータが買う。どれを選んだかは、当日貰うまでのお楽しみ。そんなやり取りをしたっけ。
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