週末

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 いつの間にか声に出てしまっていたらしい。深く突っ込まれない代わりに、それ以降一切会話が無かった。まぁ、オレ限定コミュ障を発症してしまうコイツに期待はしてなかったけどさ。  そうこうしている内に、目的地に辿り着く。やっぱり人が多いな。効率良く回るため、まずは何処へ行こうか聞こうとして、気付いた。オレの誕生日プレゼントを探すんだから、オレが決めるべきなのか。  と言っても、欲しい物が直ぐに浮かばない。向こうでトータにねだったやつをいくつか思い出してみるものの、男物の服や小物ばかりで参考にならなかった。  無難に漫画にしようかと思って、本屋に行くことを提案するとトータが縦に首を何度も振りまくる。いや、一回で分かるから。  話題提供に、ワザとらしく『そう言えば、トータくんのアイコンのキャラ。あのバスケ漫画の主人公だよね』と言ってみると。 「あっ、ナツキちゃんも知ってる!?そうだよね、バスケだもんね」  良い感じに食い付いて来て、これならまともな会話が成立するかもと思いつつ……何かが引っ掛かる。でもその違和感の正体には気が付かず、さっきよりかは流暢になったトータと漫画トークを楽しんでいたら。 「そう言えば、昨日からあの漫画のアニメ映画が公開だった筈……」 「えっ、マジで!?観たい!!」  そこそこアニメも嗜むオレなので、知ってる漫画のアニメは大体視聴している。特にその作品は声もアニメ化前に想像していたのとピッタリで、お気に入りだった。  その割にアニメ映画の公開日を忘れていたのは、こっちの世界に来てから色々それどころじゃなかったっつーか……。 「じゃあ、観に行こう!」  トータもアイコンにしちゃうくらい、何ならオレよりハマってた筈。もちろんオレが知ってるのは向こうの世界での話だけど、それはやっぱり変わらないみたいだ。喜びを隠す様子もなく、映画館のある棟の方へ足を向ける。  エレベーターで移動中に上映時間を調べたらしく、画面をオレに見せながらちょうど30分後に開始する回があると教えてくれる。『それにしよう』と答えると同時に扉が開き、映画館に到着したので二人でチケット売り場まで進んだ。
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