週末

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「正直、選ばれる程実力があったとは思えないんだよ。オレなりに頑張ってたけど、その壁は高かった。だから、最初は聞き間違いかと思ったんだ」  常にレギュラーを張っていたとある先輩を含む三年達の、引退試合にあたるものだった。これが中学最後になるからと、普段以上に練習にも力が入っているのが端から見ても分かった。  それなのに前日、監督から発表された当日のメンバーに先輩の名前は無く、代わりにオレが呼ばれた。女の高瀬夏希は平均的だけど男のオレははっきり言ってチビだし、技術も優れている訳じゃないから日常的にナメられてたんだ。  そんなオレが代わりに選ばれていたことがより一層先輩のプライドを傷付けたらしくて、試合を終え三年が引退した後は、その先輩を慕っていた同級生達から嫌がらせを受けるようになった。  トータを筆頭に守ってくれるメンバーも居たけど、そいつらを巻き込むことを恐れ退部を決断した。監督も察してたのかもしれないし、別に居なくなっても支障は無いと思われたのか分からないけど、オレは引き止められはしなかった。  でもトータは別だ。身長も高いし、上手かったし。二年になってからはずっとスタメンで、次期エースと期待もされてた。なのにオレが辞めるって言ったら『じゃあ俺も』と、何の未練も無さ気にオレと一緒に辞めてくれた。 『ナツキが居ないんじゃ、つまんねーもん』そう言って、いつもと変わらない笑顔を向けて来るトータにどれだけ救われたか。それ以来、味方で居てくれたバスケ部メンバーとも付き合いづらくなって、友達と言える相手が急激に減ったオレの隣に在り続けてくれた親友。  もちろんそんなトータのことは口にせず、バスケを辞めた経緯をかいつまんで伝えると。 「そっか……」  悲しそうな顔をして、目の前の彼はそれだけ呟いた。
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