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「いやぁー良かったじゃないですかナツキくぅん、愛しの春ちゃんに祝ってもらえるなんて!」 「バッカ、誰かに聞かれたらどうすんだよ!!」  慌ててトータの口を押さえ、周囲を見渡す。幸い授業開始前、それぞれ友人達との会話に夢中でこっちを気にする奴は居なさそうだ。にしても、あんだけトータが目立つ行動をしてたにも関わらず近付いて来たのが皆川だけって。割と薄情だな、このクラスの生徒。 「つか、お前いつから皆川のことそんな親しげに呼んでんだよ!」 「ふっふ、それは俺がこの通りイケメンだから…………いたた、痛い痛い!髪掴まないで!引っ張んないで!!本当は委員会が一緒で、向こうが呼ばれ慣れてるから『春ちゃん』って呼んで欲しいって!!」 「……あっそ」  オレは急に気が削がれて、トータから手を離す。悔しいことに、確かにトータは顔が良い。加えて限界突破したコミュ力だ。モテない訳がない。それに比べて、オレは自他共に認める女顔。小学生のときなんか、よくボーイッシュな女の子に間違えられていた。  皆川だって、こんな顔を合わせれば訳の分からない言語しか発せないオレと話すより、トータと話す方が何十倍も楽しいだろう。思考がどんどん薄暗い闇へと落ちて行く。 「ナツキ」 「何だよ」  オレを地の底に落とすのがトータなら(いや、オレが勝手に落ち込んでるだけだけど)、引き上げるのもコイツだ。オレはトータが人の悪口を言ってるとこなんて見たことがない。裏表のない素直な性格、それもコイツの魅力の一つなんだと思う。 「クラッカーで床が散らかっちゃったから……片付け手伝って☆」 「それはお前が一人でやれええぇぇっ!!」  計算なのか天然なのか、ふざけていつの間にかオレの心を正常に戻してしまう。どうも憎みきれない、俺の大事な親友だ。
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