一週間後

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 何とも表現し難くなってしまったトータとのお出掛けを終え、ここでは初めて迎えた月曜日。  待ち合わせ場所に現れた皆川の、何かを期待した表情に気付かないフリをし続け映画以降は何だかんだ流暢に話していた筈のトータが、週変わりのせいかリセットされて今までのどもりくんに戻ってしまったことに落胆した朝。  弁当をつつきながら、小声でひたすら何かあったであろう体で質問を止めない皆川を無視した昼。  こりゃあ下校タイミングでいよいよ吐かされるかな……と身構えていたら、帰りのホームルームで担任が告げた一言で状況が変わった。 「図書委員の遠藤と高瀬は、今日と明日は本の入れ替え作業があるから放課後図書室に行くように」  このクラス、高瀬はオレ一人なのでどうやらオレは図書委員だったようだ。あー確かに、向こうの世界でもそうだった気がする。委員決めのとき、ついうっかり皆川に見惚れて挙手し忘れ、余っていた図書委員に宛てがわれてしまったことは、記憶から消したままでいたかった。  相方である遠藤と言う生徒は、名前順で着席している今の席だとちょうどトータの後ろに座っていた。顔の半分を覆ってしまう程大きな丸眼鏡をした、黒髪の小柄な男子。あれコイツ、どっかで見たことあるような……って、クラスメイトなんだから当たり前か。  ホームルームが終わって担任が教室を出て行き、残された生徒達も帰るのか部活に行くのか分かんねーけど次々と出入口に向かう中、まだ帰り支度をしてるっぽい遠藤の元へと歩み寄る。 「えっと、遠藤……くん。一緒に図書室に行かない?」  当然、彼の前の席に居るトータにもオレの言葉が聞こえたようで何かこの世の終わりみたいな顔して固まってるけど、お前はただの友達だからな?他の男子に話し掛けたからって、ショック受けられても困る。  そもそも、委員会で仕方なく声掛けてるだけだし。未だトータと皆川以外殆ど接点の無い、ほぼ初対面みたいな相手に自分から行くのがどれだけ勇気要るか……ああ、基本はコミュ力お化けのコイツには分からないか、うん。すまん、オレが悪かった。 「別に良いけど……もう行くから」  音程としては高めだけど何の感情もこもっていない淡々とした低音でボソリと呟き、『別に良い』と言いながらも人のことを押し退けて遠藤はさっさと教室を飛び出して行ってしまった。 「あ、おい。ちょっと!」  皆川に一緒に帰れないことを告げる暇もなく、慌てて遠藤を追い掛ける。まぁ向こうも担任の話聞いてたんだし分かってるとは思うけど、一応後で謝罪のメッセージ送っとこう。
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