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全学年、全クラスから決められた男女二名の図書委員が集結した図書室は、なかなかの大所帯だ。
作業は遠藤とペアで行うことになったのだが……んまぁ図書室と言う場所の性質上、ベラベラと喋るところじゃないとは言え、妙にオレ達の間に漂う空気が重い気がする。
多分だけど、遠藤ってそもそも人と交流したがらないタイプだと思う。拒絶オーラが凄いっつーか、近寄り難い雰囲気が出てる。ま、トータや皆川なら気にせず話し掛けられるんだろうけど。
そんな訳で、今手に持っている本の戻し場所がちょうど遠藤の立っている位置なので、どうしようか悩んで早15分経過。声を掛ける勇気がちっとも生まれないので仕方ない、棚が遠いから後回しにしてた本達の作業に取りかかるとしよう。
「ちょっと、ぼーっと突っ立ってないでちゃんと動いてくれない?いつまで経っても終わらないんだけど」
「は、はいぃ!」
「……ねぇその本、該当箇所はここだから、さっさと貸してくれる?」
「オ、ネガイシマス……」
言葉がまるで冷気を放っているようだ。眼鏡の奥に見える遠藤の瞳は細く、鋭い。おずおずと本を差し出すと、舌打ちでもして来そうなくらい不機嫌に顔を歪めながら本を奪って行った。
マジ、遠藤、怖い、泣きたい。
こんな感じで、その日は遠藤にいちいちビビりながら委員会の仕事を終えたのだった。
思ったよりも本が多く作業が終わりきらないらしく、委員会は明後日も含めた三日間やることになった。翌日である二日目も同じような空気だったものの。
「……ん?」
視線を感じて振り向くと、慌てて顔を背ける遠藤。これが、何度も続いた。相変わらず拒絶オーラ凄いし出来ることなら無視したいけど、もう気になって仕方ない!
「あの、遠藤……」
「何?」
たった一言で凍る。コイツ、雪魔法でも使えるのか?でも負けていられない、オレは意を決して言葉を放つ。
「な、何かさっきからこっちを見てるような…………す、すいませんごめんなさい気のせいでしたごめんなさい!!」
「はぁ……」
分からせるためにやってんだよ、と言わんばかりに大袈裟な溜息をついた遠藤が、図書室なんだから大声を出すなと至極真っ当な注意をして、それから。
「ちょっと、貴方と話したいことがあるの。ここでは聞きづらいことだから、委員会が終わった後時間をちょうだい?」
「へっ?あ、はい……」
淡々と用件だけ告げて、作業へと戻って行く。意外だった、遠藤が話したいこと……何だろう?
常に頭に疑問符を浮かべながらも、今日のノルマを終わらせた。
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