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「高瀬くん、貴方が居た。私の知る高瀬夏希とは、別の姿をした貴方が。もしかしたら私と同じかもしれない、そう思ったけれどまずは様子見ね。それは正解だったわ、最初に会った貴方はこっちの世界の貴方だった。皆川さんと仲が良くて、相澤くんとは初対面。でも彼を気にしている。一方相澤くんも、貴方を気にしている。辛かった、別の世界での貴方達の関係を知っているからこそ、きっとこの世界では結ばれる運命なのだろうと。そしてここでの私は男子だから、割り込むことすら不可能。黙って見てることしか出来ない立ち位置なんだと……」
「遠藤……」
「私は、元の世界に戻りたかった。いいえ今でも諦めていないわ、だから貴方に自分の境遇を打ち明けたの」
急に腕を掴まれた。身長はほぼ同じとは言え遠藤の体は男子だ、それは結構な力だった。
あれ、前にもこんなこと、あったような?
「ずっと観察をしていたら、ある日突然貴方の態度が急変した。何の躊躇いも無く彼に話し掛け、文句を言う貴方。そして放課後の貴方達三人の会話の中で聞こえた『誕生日』と言う単語……漸く、糸口が見えて来たと思った。貴方も、誕生日にこっちに来たのよね?」
声は出さずに頷いた。遠藤の勢いに圧されてたってのもあるけど……何となく、言葉が浮かばなかった。
「一人より二人の方が、何か思い付くかもしれないわ。高瀬くん、情報を共有しましょう」
今日はもう遅い時間だからと、連絡先の交換だけして遠藤とは別れた。見慣れた道を、一人ぼっち。何故だかいつもより、寂しく感じる。
「……元に戻る、か」
何だかんだでこの世界に馴染んで来てたので、考えもしなかった。
でも確かにそうだ。ここに居ても、皆川と結ばれる確率は女性同士なんだし、非常に低いだろう。
オレとしては、今まで接点を持てなかった彼女と当たり前に過ごせるってだけで、満足してしまっていたようだ。
遠藤は、それだけじゃ駄目なんだ。自分をトータの恋愛対象に加えて欲しいんだ。
ポケットから振動を感じたので確認すると、早速遠藤からメッセージが来ていた。
【図書委員の仕事は明日もあるし、放課後また時間をもらうわ。それと、ひとまず向こうに戻る手立てが分からないから、こっちで出来ることはしたいの。】
そして次に送られて来た一文で、何故かオレは心がざわついた。
【高瀬くんには友人として、相澤くんとの仲を取り持って欲しい。】
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